▲テレコン事業部計画課の皆さん
ファブレス型生産管理システムが軌道に乗る
計画課全員が業務に精通し、月末処理もスムーズに
社内で唯一、メーカー業務をファブレス(工場を持たない製造)で行う、金陵電機テレコン事業部の生産管理システムがきわめて順調だ。計画課のメンバー全員が業務フローをよく理解し、生産計画から材料手配、在庫管理、納期管理まで確実にオペレーション。輪番で行う月末処理も、誰もが迅速にこなす。「TPiCS導入を機に、課員たちの自主性に委ねたことが奏功しました」と同事業部技術課兼計画課課長の生駒光司氏は話す。
金陵電機㈱は、大手計装機器メーカーのFAシステムを販売するFAシステム営業部、化学分析機器をトータルにプロデュースする分析営業部、無線遠隔操縦装置を取り扱うテレコン事業部の3部門を核に、産業界のさまざまな顧客ニーズに技術で応える企業である。商社から始まったこともあって、全社的には販売活動が中心だが、社内で唯一、メーカー事業を行うのがテレコン事業部である。
テレコンとは、スイッチなどの制御信号(電気信号)を電波に変換し、離れた場所に信号を伝える装置。1963年にアンリツ㈱(神奈川県厚木市)が産業用の無線操縦装置として開発したもので、商品化の際に家庭一般用のリモコンと区別するため、「tele-control」(遠くのモノを制御する)を略して「テレコン」と名付けたものだ。
テレコンが最もよく用いられるのが産業用クレーンの操作。無線のためケーブルレスになり、電気配線が困難な場所や、場所を移動しながらの操作が必要な環境での制御に適している。また、大きなクレーンになると、かつてはクレーン上で操縦する人、操縦者に合図を送る人、荷物を吊り下げる人の3人が必要だったが、テレコンを使えば1人で作業することができ、作業効率が向上する。
「リモコンとの大きな違いは、産業用途で使用されるため、安全性や耐久性を重視した設計になっていること。特に鉄鋼や自動車、造船など重厚長大産業向けで、当社製品はトップシェアを握っています」と生駒氏は話す。
◀テレコンの例
▲生駒光司氏
同社のテレコンには、腰に装着するウエストタイプ、片手で持てるハンディタイプ、固定(据え置き)タイプの3種類があり、商品アイテムは約20種類。さらに制御器と受信装置が1対1か1対2かの違いや周波数によって品番は分かれる。また、ウエストタイプは標準品の商品よりも、カスタム仕様でつくられることが多い。
生産はグループ会社の㈱金陵製作所(大阪府箕面市)など数社の協力会社に委託するファブレス方式である。しかし、受発注業務をはじめ生産計画、在庫や納期管理など、モノづくり以外の製造業としての機能はすべて持っている。そして、これらの生産管理に関わる業務をこなしているのが、生駒氏を課長に、佐々木歩主任、松井幸子氏、木内純子氏、吉田かほり氏、博田京子氏の総勢6人のテレコン事業部計画課のメンバーである。
同社がメーカー事業を開始したのは1999年。アンリツ(株)からテレコン全般の事業譲渡を受けてからだ。「それまでは販売だけだったので、生産管理とは関係がなかったのですが、事業譲渡されてから、その必要性が出てきたのです。しかし、社内にあるコンピュータシステムは販売管理や会計ソフトばかりで、生産用のものはない。とりあえず表計算ソフトのExcelを使って、何をいつ、何個買ったかなどの記録を残すようにしたのが始まりと聞いています」(佐々木氏)。
その後、Excelに加えてプログラミングが可能なAccessを用いて受発注管理や資材管理など、生産に関する独自のプログラムを作成し、販売管理システムと紐づけた。それ以外にもMS-DOSの環境下で動くソフトなども導入したが、部品展開まで行うような本格的な生産管理にはほど遠かった。
最初の転機は2005年。全社の販売管理システムが一新されたのを機に、同じシステムメーカーの生産管理システム(以下、旧システム)を導入した。MRPや部品構成表など生産管理システムとしてひと通りの機能を持ち、2014年までの9年間使い続けた。しかし、旧システムにも問題はあった。
「一番不満だったのは、部品手配をする際、きちんとした手配がかからないことでした」(松井氏)。MRP機能はあっても、納期設定が過去納期のため、実在庫との間にずれが生じることが少なくなかった。そのため、部品を集めようとしても、確定されないから注文書も出せない。それらの対策として、「毎日レポートを出し、過去納期のチェックをしていました。とにかく、旧システムでは〇〇チェックというのをたくさんしなければならないという問題点がありました」(木内氏)。
それまで組めなかった構成が組めるようになったのは大きな前進だったが、「構成を組むのにすごく時間がかかり、コンピュータが固まることもよくありました」(吉田氏)。
カスタマイズ性が低いのも大きな問題だった。しかも、「システムメーカーにお願いすると、わずかな変更でも多額の費用がかかるのです」。やむを得ず、生駒氏自らAccessでプログラムを組み、帳票として出力するなどして対応していたという。「そのため、旧システムでは私のつくったプログラムが何本も動いていました」と生駒氏。
旧システムからTPiCSに変更することになった直接のきっかけは、旧システムのシステムメーカーが、現行バージョンのOS(基本ソフト)サポートの打ち切りを通告してきたことだった。カスタマイズ性が低いうえ、OSサポートの更新料にも多額の費用がかかる。その一方で、生産管理システムの市場には価格性能比に優れ、カスタマイズ性のよい製品が多数存在する。その代表的製品がTPiCSだったのだ。
かくして2012年の暮れ、「旧システムで動かしている業務がすべて行えることと、追加開発費用なく設定で柔軟にカスタマイズ対応をできること」を確認し、システムベンダーの㈱システムユニを通じてTPiCSを導入することを決めた。
TPiCSの導入にあたり、生駒氏は従来とは考え方を変えた。「旧システムのときは、業務フローやプログラム作成、月末処理まで私が前面に出ていましたが、計画課の課員は誰もが能力に長けるので、皆の自主性に委ね、私は裏方に回ろうと」。
だが、当初は混乱を来した。「それまでシステムの立ち上げに参画した経験がなかったため、今までやってきたこと、これからやりたいことをシステムユニさんに、どう伝えたらいいのか分らなかったのです」(博田氏)。しかも、業務フローまで作成することになったため、部分最適でなくシステム全体のことを考えなければならない。そこで、システムユニを交えて毎週、課員全員で議論を重ねた。その結果、業務フローを何度も書き換えることになり、本稼働は2度延期。導入を決めてから1年3ヵ月後の2014年4月にようやく稼働した。
しかし、議論を重ねた甲斐あって、随所に工夫が凝らされた使いやすいシステムに仕上がった。例えば外注工場向けに出す、生産スケジュールの画面。旧システムでは在庫を見たい時は在庫画面、発注履歴なら発注画面を、それぞれ個別に見なければならなかったが、TPiCSは1つの画面で同時に見ることができ、計画立案しやすくなった。
また、図面と注文書の一体化も実現した。従来はメールで送るのは注文書だけで、図面は手作業で封筒につめて郵送していたが、電子図面に変更し、図面ファイルを登録するユーザー項目を追加して、注文書と一緒にメールで送れるようにした。納入時の受け入れ検査でも、注文書の図面が自動的に出るようになり、それらに関する工数が削減できた。
TPiCSはデータベースの定義が公開されているので、テーブルやフィールドの説明やビューを作成するなどの(株)システムユニからのサポートを受け、Access等で運用のチェック資料や業務資料などを作成している。
最大の効果は月末処理が大幅にスピードアップしたことだ。生駒氏が一人で行っていたときは、夜の10時すぎまでかかることがあったが、今ではものの40~50分で終了する。月末処理のほか、注文書の発行や受け入れなども課員が持ち回りで行っており、「TPiCSになってからは、『この人でないとできない』という仕事がなくなりました」と博田氏。
「TPiCSの魅力はシステムがシンプルであり、なおかつカスタマイズしやすいこと。また、着手信号機オプションで未入庫の部品を確認できるなど、使う側の身になって考えられているところが良いですね」と生駒氏は話す。
今後の課題として、工場の工程管理がある。同社の場合は他社工場なので、一筋縄ではいかないが、今以上に納期管理をきちんと行うためには、避けては通れないからだ。「協力会社と話し合って、お互いにメリットが生まれるような仕組みをつくりたい」と佐々木氏。いずれにしても現状に満足せず日々、システム改善に努めているのが計画課の今日の姿である。
▲博田京子氏
▲生産管理の端末
金陵電機株式会社
▲金陵電機本社の外観
代表者 | 澤田 力哉 |
本社 |
〒532-0033 大阪市淀川区新高3-3-11 TEL.06-6394-1161 FAX.06-6395-3185 |
創業 | 1946年8月 |
設立 | 1952年3月 |
社員数 | 154人 |
売上高 |
95億7600万円(2018年3月期) |
URL | https://www.kinryo-electric.co.jp/ |
株式会社 システムユニ
生産管理システムを日々の生産活動と完全に連動させ、根気よく運用を続け、カイゼン・改革を推進する人材を会社の中に作ります。
〒540-0038 大阪市中央区内淡路町2-4-2
TEL:06-6946-7001
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担当営業:久岡美弘