▲生産管理関係者の皆さん
製造ルールが徹底され工程の遅れが減少
基盤となった生産管理を起点に原価管理へ
素材から加工まで精密治具やマシンバイスを一貫生産するナベヤ。製造力強化を目指してTPiCSを導入してから3年。生産管理はかつての手作業からコンピュータ指示型に変わり、1日2回の所要量計算が順調に回っている。工場内はルールが徹底され、システムと現場の作業が一体化。主要商品の基準在庫の設定もでき、納期遅れがなくなった。当初目標とした原価管理のシステム運用に向けて着実に前進している。
㈱ナベヤの創業は戦国時代の1560年。以来、5世紀にわたって「鋳物づくり」を探求し続けてきた国内屈指の老舗メーカーである。現在は岐阜県内に2つの工場を持ち、主に本社工場は鋳物づくり、もう1つの工場は精密加工を手がける。1980年代以前は海外市場向けの万力(バイス)の生産が中心だったが、1985年のプラザ合意後に円高が進んだことから内需転換を図り、それと並行して商品の幅を広げた。現在の主な生産品は、精密治具、治具材料、治具部品、精密マシンバイス、メカニカルパーツ、除振防振製品などである。
▲ 精密マシンバイス
▲ 取締役製造部長兼本社工場長の国分英二氏
▲ 精密加工工場内の光景
▲ 研磨加工
同社における生産管理システムの歴史は1980年代に遡る。「私が生産管理課に配属されたのは入社5年目の1989年のことで、当時からオフコンを使っていました。端末は一人1台ではなく、1グループに1台という感じで、先輩が使い終えるまではなかなか使えなかったものです。ただし当時、コンピュータを使っていたのは伝票発行くらいで、その他の仕事はほとんど手計算に頼っていました」と取締役製造部長兼本社工場長の国分英二氏は述懐する。
その後、オフコン上で動く生産管理のパッケージソフトを導入した。しかし、このソフトウェアは所要量計算(以下、MRP)機能を持つものの、マスターが不備だと計算に混乱が生じ、しかも1回の計算をするのに一晩かかるなど、実践的な活用からはほど遠かった。
2001年にソフトウェアを更新したものの、相変わらずMRP計算には時間がかかり、結局、MRPの活用は断念し、元の人手による計算に戻った。
「とにかくMRPを回す勇気がありませんでした。回しても『これは取り消しなさい』『この動きを変えなさい』など、警告文ばかり出てきて、とても活用できる状態ではなかったからです」(国分氏)。
その間、会社の業績は山あり谷ありが続いた。中でもバブル崩壊後やリーマンショック後の不況時には、事業の縮小を余儀なくされた。さらに、一度事業を縮小すると、景気が回復しても、なかなか元には戻らなかった。これらの苦い経験を二度と繰り返さないよう、同社の岡本知彦社長は、
「景気のよいときしか商品シェアは拡大できない。そのチャンスをものにするには商品力はもちろんのこと、製造力の強化こそが大事である」と力づけを与えた。この方針のもとで、2010年代に入ると製造力強化に向けた生産管理システムの抜本改革に乗り出すことにした。
新たな生産管理システムを構築するにあたり、優先課題としたのが利益に直結する原価管理の運用であった。ただし、原価管理は生産実績との紐付けが必須となり、生産管理システムそのものが強化されないかぎりは成立しない。そこで、目標である原価管理を見据えつつ、まずは強靭なシステム構築を目指すことにした。
各地の展示会に足を運び、市場に出ている生産管理のソフトウェアやパッケージの調査をした後、最終的にはSI会社5社に、それぞれが推奨するソフトウェアパッケージのプレゼンテーションを行ってもらった。その結果、コストパフォーマンス、操作性、柔軟性など、多くの面で優れていたTPiCS4.0 を導入することにした。「中でも、TPiCS の持つ豊富なパラメータ機能に魅力を感じました」と国分氏は話す。というのも、同社では1980 年代のTQC(全社的品質管理)活動、90 年代のTPM(全員参加の生産保全)活動、2000 年代に入ってからの生産革新活動という流れで職場の改善活動に取り組んでおり、時々の改善成果を生産管理システムに反映させたいという思惑があっ
たからである。正式決定は2016 年暮れのことであった。
▲製造部生産管理課課長の白川裕氏
▲精密加工工場工場長の増田智昭氏
システム設定の重責を担ったのは、システム構築力に優れ、TPiCS の豊富な納入実績を持つSI 会社のトーテックアメニティ㈱である。まず大前提として、精密加工工場はMRP を活用して手計算からコンピュータ指示型へと
変更すること。その一方で、鋳造を行う本社工場は、業務の特殊性を考慮して、TPiCS から発注指示と受け入れは行うものの、工程管理用としてオフコンを残すことにした。
それから約10 ヶ月、TPiCS によるシミュレーションを繰返し本稼働が迫った。「実は、前システムの失敗があるだけに本稼働が怖くて、一度3 週間延期してもらっていたのです。延期した稼働日も近づき、それでも不安、
再度延期しようかと考えていたところ、製造部長から『大丈夫だ、スタートしろ』と言われて、踏ん切りがつきました」
と製造部生産管理課課長白川裕氏は打ち明ける。こうして、新システムは2017 年10 月に本稼働した。
ただし、当初は苦戦した。とくにマスターの整備や基準在庫、リードタイムの設定には時間がかかった。同社のアイテム数は完成品で1 万5000 点。部品を含めると10万点ある。マスターはオフコンから移行したものの、リードタイムのデータが不正確なものもあり、毎月、稼働分析を行い、マスター設定の改善を行った。計画の遅れ(納期通りに仕事が終わらない)が多かったため、約1 年間、稼働分析を行いながら、マスターメンテを行った結果、安定稼働するようになったという。
製造部生産管理課には課長の白川裕氏を含めて6人。課員の中には抵抗
感を示す者もいた。そのくらい、従来のオフコンとのギャップが大きかったのだ。
「オフコンから変えた直後は、ほぼ1週間にわたり朝から晩までトーテックさんに張り付いていただいて、移行にご尽力いただきました。それ以降もきちんと対応していただいており、感謝しています」(白川氏)。
TPiCSを入れて一番変わったのは、MRPによる発注により、無駄な生産がなくなったことである。「それまでは『つくらないといけない』『手配しないといけない』というフラグが立たないまま、生産管理の担当者が在庫状況を見ながら、人力で生産計画を立てていたのです。しかし、これだけ品物があると、どうしても発注もれが出るものですが、それがなくなりました」(白川氏)。
生産管理課では、工程ごとの納期チェックを毎日行っており、とくに今年に入ってからは、工程の納期遅れもほとんどないという。
精密加工工場工場長の増田智昭氏も、「一定のルールのもとに生産できるようになったことで、工場全体が規則正しくなった感じがしています。かつては仕事が属人化され、それぞれの製造担当者が自分なりのやり方をしていましたが、ルールに従ってモノが流れるようになりました」とTPiCSによる効果を高く評価している。
基準在庫が設定できたことも大きい。同社には在庫商品があるが、かつては、なくなってから一気につくることが多かった。在庫を必要以上に持つ必要はないが、在庫が少なくなった時点で、前もって手配できる仕組みがあれば、販売の機会損失を招くことはなくなる。ところが、以前はシステムが安定しなかったこともあり、それが困難だったという。「われわれの業界は、在庫がなければ在庫のあるところへ注文が流れる傾向があります。今はコロナ禍で、在庫は絞り気味ですが、それでも重要な商品は、きちんとリードタイムを設定して、決まった日に一定量をつくり補給できる体制をとっています。次に景気が上向いたときは、この基準在庫の戦略が真価を発揮するであろうと期待しています」(国分氏)。
▲TPiCSの画面
株式会社ナベヤ
▲精密加工工場の外観
代表者 | 岡本 知彦 |
本社工場 |
〒500-8743 岐阜県岐阜市若杉町25 TEL.058-273-6521 FAX.058-278-0220 |
精密加工 工場 |
〒501-0417 岐阜県本巣市屋井字神明130-1 TEL.058-320-0007 FAX.058-320-0009 |
設立 |
1560年(永禄3年) |
社員数 | 206人 |
資本金 | 9800万円 |
売上高 | 38億9000万円(2019年8月期) |
URL | http://www.nabeya.co.jp/ |
▲精密マシンバイス▼
▲治具部品
トーテックアメニティ株式会社
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