▲福山鉄工所のみなさん
生産計画立案の時間が半減
社長自らTPiCSを管理・運用
福山鉄工所は少数精鋭主義を貫く精密金属加工会社だ。標準品と特注品を取り扱い、特急のオーダーも多い難しい業態だが、思いがけず社長自らTPiCSを管理・運用することになったことが、適切な納期回答、実行可能な生産計画立案、作業指示に導いている。TPiCSの本格稼働から8年。すでに所要量計算をはじめ、ガントチャート、スクリプト機能の活用などで効果を上げており、今後は、より緻密な生産管理を求めて、製番管理機能や着手信号機機能も導入する考えだ。
(株)福山鉄工所は旋盤、マシニングなど機械加工を中心とした精密金属加工の会社である。設立は1971年で、農機具や建設機械部品の加工からスタートした。転機が訪れたのは1996年。岡山県産業振興財団主催の商談会で、大手精密機器メーカーとの出会いだった。「部品加工のパートナーとして、企業規模は小さくてもフットワークがよく、やる気のある会社を探されていたときであり、幸運にも担当の方と意気が合い、直取引できるようになったのです」と福山康二社長は振り返る。現在では、売上の約8割は同精密機器メーカー関連の仕事で占めている。
しかし、当初は苦労した。同じ金属部品といっても、従来とは要求される品質レベルが全く異なったからだ。「失敗を重ね、ときにはお叱りを受けることもありました。それでも、鍛えられたおかげで当社の技術力は年々向上し、お客様からも信頼していただけるようになったのです」(福山社長)。同社が製造するのは、精密万能試験機用のアクセサリである引張試験治具、圧縮試験治具、曲げ試験治具であり、単体の部品製造のほか、めっき、熱処理、塗装、組立などを伴うアッセンブリー品も手がける。いずれも顧客のサンプルと直に接触するため、試験データに影響を与えるといった非常に責任重大な製品である。
▲ 工場内の風景
▲ 検査施設
▲福山 康二 社長
生産管理システムの必要性を感じたのは、2000年代に年代に入ってからだ。かつての同社には在庫という概念がなく、2個必要なら2個だけつくる一発勝負の加工会社だった。現在のメインの顧客と取引が始まった後も、月間500万円くらいの取引量のうちは、在庫は持たなかった。在庫を持たずに客先への納期に対応できる高い技術力も評価された。しかし、取引量が増えるにしたがって在庫が必要になり、管理が必要になった。
ただし、管理面で最も必要としたのは、顧客に対する的確な納期回答だった。同じ顧客企業であっても、多くの部署からさまざまな注文が来るため、返答に窮していたのだ。そこで、エクセルでデータ管理をすることから始め、その後はエクセルマクロにて簡易的な生産管理を行うなど、徐々に業務のデジタル化を進めた。しかし、エクセルやエクセルマクロでは何をするにも時間がかかりすぎて、迅速な
納期回答は行えずにいた。
生産管理システムの導入に動いたのは2008年頃のことである。他のパッケージソフトウェアを選定し、運用を始めようとした。ところが、すぐに自社には適さないことが分かった。同社には、カタログ品(標準品)の繰り返し加工と、特注品の加工という2種類の業務がある。また、それぞれに単体の部品製造のほか、20ほどの部品から成るアッセンブリー品があり、それらがスムーズに管理できないと完成品にはならない。さらにそのソフトウェアには、所要量計算にて自動で計画を立てる機能がなかった。そのためシステムの導入は、いったんは白紙に戻った。
改めて導入に動いたのは2013年である。5件ほどの市販ソフトウェアを比較検討。その中から、同年9月にTPiCS-X Ver4.0を選定した。決め手となったのは、TPiCSのカバー領域の広さ。繰り返し生産品にしても一品ものの特注品生産にしても、データとして扱えないものはない。また、各画面でCSVに書き出しができ、エクセルで見たい形に容易に加工できるのだ。中でも福山社長が気に入ったのは、TPiCSのキャッチフレーズの「攻撃型生産管理システム」という言葉だった。「当社の指向とよくマッチしていたからです」と福山社長。
導入決定から8か月後の2014年5月には早くも本番稼働に入った。当時のアイテムマスターは1万数千点(現在は3万5500点)。従業員数10数人の会社としてはけっして少なくない数だが、エクセルマクロ時代からベースができていたため、移行はスムーズにいった。2020年には4.1 にバージョンアップしている。
▲ TPiCSの画面
▲ ガントチャートの画面
▲ タブレット端末
TPiCSで行う管理業務は在庫管理、買掛け、受注管理、工程進捗管理など。中でも、導入して最もよかったと思うのは所要量計算が迅速に、正確にできるようになったことだ。エクセルマクロでも計算は行えたが、「スピードが全然違うしミスもなくなりました」と福山社長。メインの顧客の場合、毎日3回(朝・昼・夕方)、Webを介して注文が入る。それに対して担当者は、午後1時にTPiCSに取り込む。そこで所要量計算をすれば、在庫と照らし合わせて、基準在庫を下回ったものは自動的に手配がかかり、出てきた情報をもとに作業指示を流す。あとは、会社全体が決められたルールに従って動けば、過不足なく生産が行える。所要量計算にかかる時間は約5分である。
所要量計算機能と併せて、大きな存在価値を感じているのが、工程の負荷状況が一目でわかるガントチャートだ。
以前は、ホワイトボードに作業者、日付、設備名を書き出し、「この人は今日、これをやってください」と書いて指示していた。しかし、手書きではどうしても漏れが出た。ましてや20工程もあるものを順番通りに追いかけていくのは、大変な作業であった。
これに対し、ガントチャートはマスター内容に基づいて納期から正確に割り振ってくれる。「これがあるのとないのとでは大違いです」と福山社長は言う。TPiCSの機能が物を言って、導入前と比べ、生産計画立案の時間も半減したという。
このほか、現場の入力業務にタブレット端末(6台)を用いているのも特徴だ。TPiCSの導入と運用をサポートするSI会社のアイティーコーポレーションが制作したソフトを、タブレットに搭載し、資材受入、社内工程、出荷など作業者がその場で入力することで進捗が事務所に居ながらにして確認できる。「それまでは事務所がまとめて入力していましたが、どうしても時間差が生じていました。それがリアルタイムで情報が確認できるようになり、事務所の負担が減りました」(福山社長)。
ところで、同社におけるTPiCSの運用は、常に順調であったわけではない。IT化は進んでいて下地があっても少人数の会社であるだけに、導入当初からTPiCSを運用し、生産管理業務を行っていた女性従業員は現在、休職中である。復職のことも考え、2年前からは福山社長自ら生産計画の調整を行っている。
「TPiCS については、まだ完全にマスターしきれていないし、疑問も次々と沸いてきます」と福山社長は言う。
その際、頼りになるのがTPiCS研究所のサポートセンターだ。「以前の担当は疑問が浮かんでも、サポート費用がかからないように自分で何とかしていたが、私の場合、かけられる時間が限られるので、その都度、問い合わせています。大概のことは即答いただけていますが、モノづくりというのは日々変化するので、実を言うと未だ解決しきれていないものもあります」(福山社長)。
とは言え、社内の誰よりも工程をよく知る社長なだけに、運用上のアイデアはどんどん生まれる。同社では毎朝、作業指示を出すが、それ以降も注文はどんどん入ってくる。
中にはギリギリの納期や割り込みの注文もあり、その通りに所要量計算してしまえば当然直前の計画も大きく変わってしまう。以前はそのまま流していたが、今は、事前に受注をチェックし、あまりにもタイトな納期は一旦省いて所要量計算。急を要するものは必ず顧客と実現可能な納期へ交渉した上、所要量計算にかけることで、ガントチャートで負荷を確認してみても変化が極力抑えられた、現場が混乱しない作業指示に努めている。
ここにきて、スクリプト(自動実行)機能の活用も始めた。
データの書き出しができるTPiCS の機能を生かして、深夜0時になったら、自動的に複数のファイルが書き出されるように設定。これにより、昨日一日の現場の出来高はいくらか、在庫金額はいくらかなど、皆が見たいものを見たい形に変換することが可能になった。「IT活用の最大のメリットは、データを残すことで次に生かせることであり、そのために皆でデータを入力しているわけです。スクリプト機能の活用は、従業員のスキルアップにもメリットがあります」(福山社長)。
TPiCS活用の今後の目標は、より緻密な管理をするため、現行のf-MRPに加えて製番管理を導入することと、工程が進んでいるなかで割り込みにより生産の調整が必要になっても、今作業できる指示を容易に判別できるように着手信号機オプションを導入することであり、「一歩ずつ前に向いて進んでいきたい」と福山社長は意欲的だ。
株式会社福山鉄工所
▲本社・工場外観
代表者 | 福山 康二 |
本社 |
〒701-2511 岡山県赤磐市稲蒔1025-1 TEL.086-954-0728 FAX.086-954-1852 |
設立 |
1971年 |
社員数 | 16人 |
資本金 | 500万円 |
売上高 | 1億7000万円(2021年8月期) |
有限会社 アイティーコーポレーション
長年にわたる導入実績に基づく経験とノウハウにより
TPiCS-Xの導入・立上げを誠心誠意サポートいたします。
〒710-0051 岡山県倉敷市幸町1番37号
TEL:086-430-2626
MAIL:ishii@shirakabe.co.jp
担当:石井 武志