▲生産管理に関わる皆さん
TPiCSの活用で購買部門の工数が4割減
仕事の属人化解消も進む
キッチン用品メーカーの伸晃は2022年7 月に生産管理パッケージT P i C S(Ver.5.0)を導入。約1年のテスト期間を経て2023年10月から本格運用を始めた。製品点数が多く、生産形態も多岐に渡る中、TPiCSの持つ柔軟性と日々、所要量計算が行える効果が現れ、購買部門では業務工数を4割削減。その他の職場でも業務遂行の属人化が解消されつつある。今後もTPiCS活用と並行して生産現場での工程改善を進め、両者の連動による理想的な業務運営を目指す考えだ。
㈱伸晃はキッチン、サニタリー、水周り用品のトップメーカー。住まいの収納をテーマとした家庭日用品分野で製品展開を行う自社ブランド「Belca(ベルカ)」事業と、キッチン用品のOEM(相手先商標生産)の2つの事業を行う。会社設立は1965年、伸晃金属工業として発足。その後、樹脂成形分野に進出したことが今日の躍進につながった。
生産品は多岐に渡るが、中でも清潔なシンクに欠かせない排水トラップやゴミカゴの生産を得意とする。同製品分野では国内のほぼすべてのキッチンメーカーと取引があり、シェアは7割強。強みは、製品の企画・開発から生産、販売、品質管理まで社内で一貫して行えること。また、1997年にパートナー企業と共同で日本初の完全無機質・親水性塗装「ベラスコート」を開発。このオンリーワン塗装技術により、製品
の付加価値を高めていることだ。製品開発や生産は大阪府東大阪市の
本社工場と岐阜県恵那市の恵那工場で行われている。
▲ ショールームに陳列された多彩な製品群
▲ 生産部生産管理課課長の山根 宏樹氏
▲ 本社工場内作業風景
一般ユーザー向けの販売品とOEMという異なる性質の製品を取り扱い、しかも製品点数の多さから長年、頭を悩ませてきたのが受発注や生産管理などの管理業務だ。そのシステム化に初めて取り組んだのは1990年であり、オフコンを導入し受発注管理や在庫管理などを行った。その後、コンピュータのダウンサイジングが進みパソコンが普及すると、自社内でdBASE(データベース管理ツール)を用いた管理システムを開発。さらに2 0 0 3 年にはそれを引き継ぐ形でWindows利用の生産管理システム(以下、旧システム)を構築した。これらの一連のシステム化は、その時々で一定の成果を上げた。しかし近年は、取引先から多品種少量生産や短納期が求められるなどビジネス環境が大きく変わり、旧システムではそれらへの対応が困難になりつつあった。
「中でも、旧システムの一番の問題は、所要量計算が月に1回しか行えなかったことでした」と話すのは生産部生産管理課課長の山根宏樹氏である。所要量計算の結果をもとに部材の発注をするが、足の長い(納品までに長期間要する)部材はともかく、発注から3日もあれば納品される部材までもが月に1回の発注日まで待たなければならず需要の変動に対応できなかった。また、取引先が出す情報には確定前の内示情報があるが、旧システムは内示と確定の区分けができなかった。その結果、所要量計算による情報は出ても、実際の発注時にはそれぞれの担当者が在庫状況を確認し手計算で調整することが常態化していた。「それぞれの担当者がExcelソフトなどを使って独自に計算や調整をするため、仕事が属人化され、担当者が休むと発注すらできなかったのです」(山根氏)。所要量計算以外にも旧システムは自前で構築したものだったため、汎用性が低く、柔軟性を欠いていた。
転機が訪れたのは2022年の年初のことだ。トップの判断により生産管理システムを新しい時代に見合うものに一新することになった。社内には「新システムを従来同様、自前で構築したらどうか」という意見もあったが、システムづくりは時間もお金もかかるし、汎用性のある洗練されたシステムができるとは限らない。そこで、同社として初めてパッケージソフトウェアを導入することにした。数社のソフトウェアを検討し、その結果、同社の複雑な業務形態から見て、中小企業向けの一般的なソフトウェアでは機能不足であり、繰り返し生産や個別受注生産が混在していても柔軟に対応できるTPiCS5.0こそが最適なソフトウェアであると判断した。
システム選定が終わると、2022年7月にキックオフ大会を実施。その後、TPiCS研究所のサポートセンターや導入支援を行うSI会社(システムユニ)の人に何度も足を運んでもらい、説明を受けた。「特にシステムユニの岡田敏明社長からは、『生産管理システムを成功に導くためには、製造現場の生産管理(工程管理)の改善と生産管理システムの同期化こそが重要であり、TPiCSを使うのも生産管理や情報システム部門だけでなく、製造や購買、総務など、社内のあらゆる部門で使ってもらうことだ』という話を何度もうかがいました」と、総務部情報システム課係長で恵那工場に勤務する山本崇氏は話す。
所要量計算を行うだけならTPiCSのライセンス数は少なくてすむが、全社を挙げて活用するためライセンスは20取得した。
▲ 総務部情報システム課係長の山本 崇氏
▲ TPiCSの画面
同社の製品マスターはきわめて多く、部品を含めるとアイテムマスターは4万点を超える。これらを一度に登録するのは困難なため、家庭日用品とOEMの双方から代表製品マスターを選び、計画の検証を行った。構成表は旧システムと基本的に同じ考え方なので、こちらはスムーズに行えた。
問題はマスター登録の仕方であり、旧システムからの流用だけではTPiCSにそぐわないものもあり、その整備が不可欠となった。
それでも、苦労の甲斐あって何とか乗り切れたと思った矢先に、今度はSI会社の担当者が急逝するという思わぬ事態が発生した。誠心誠意サポートに努めてくれていた人であっただけに、同社が受けた痛手は大きかった。ただし、システム化に関わる一番の問題は、何と言っても各職場の人たちの意識改革がなかなか進まないことだった。「TPiCSによる所要量計算の仕組みを説明し、これ一本で行くことにしたので、さすがにその結果を見ない人はいなくなりました。しかし、そこから出る手配情報をすべて消して、自分の思い通りにデータを入れていく人もいました。きちんとしたマスターをつくり、自動で回したほうが絶対に楽だと思いましたが、そういう頑なな人もいました」(山本氏)。
2023年10月に運用を開始。現在、TPiCSで動いているのは材料の受発注、社内・社外に対する生産指示、在庫管理などだが、このうち成果が端的に現れているのが購買部門の発注管理である。「同部門では、今でも所要量計算値のチェックは行っていますが、人手で行っていた計算業務が自動化され、従来と比較して工数が4割ほど減ったという報告を受けています」(山根氏)。工数の削減に伴い、一人につき1~2時間ほど残業時間も減少しているという。
所要量計算を自動で動かすこと以外にも、TPiCSの便利さはいろいろ実感できている。自社独自の画面をつくれるユーザーフォーム機能はその1つ。通常のパッケージソフトウェアだと、帳票類を独自のレイアウトにしたり、画面項目を変えるには、相当な金額の追加費用が発生する。また、他人がつくるため、伝言ゲームのようになりがちで、出来上がったものに必ずしも満足できるかどうかはわからない。それに対し帳票作成の自由度に加え、ユーザー自身の手で入力フォームや検索パネルなどがつくれるのがこのユーザーフォーム機能の特徴である。「最初はSI会社さんにつくっていただきましたが、それを手本にして、次からはわれわれ自身の手でつくるようにしました。欲しい機能がその場でつくれるのは大きなメリットであり、それを社内ユーザーに使ってもらうなどして、輪を広げているところです」(総務部情報システム課係長の芝池保夫氏)。
変わったところでは所要量計算結果の即時二次利用も始めた。仕入れ先に流す発注情報は、従来は確定したものだけに限定していたが、仕入れ先の中には内示情報も知りたいという企業もある。そこでメインのデータベースで所要量計算を回した直後に、その情報を予備のデータベースにコピーし、情報共有できるようにした。また、現在、所要量計算は1日1回、早朝に行っているが、例えば注文が入ったその日に注文書が出せるよう、「午後にも回せないか」という要望も出ているという。「そういう要望が社内のさまざまな部署から出るようになったのは、今以上にTPiCSを活用していきたい、という意欲の表れでもあり、従業員の意識改革が進んでいることを実感しています」(山本氏)。
まだ、本格稼働して1年足らずだが、「組織の知識をシステムに落とし込み属人化を解消する」という当初の目標が現実味を帯び、TPiCSを共通言語にさらなる改善を目指す社内風土も芽生えてきたようだ。
▲ 本社工場内風景
▲ 総務部情報システム課係長の芝池 保夫氏
▲ 本社工場内風景
株式会社 伸晃
代表者 | 瀧本 忠夫 |
本社 |
〒578-0912
大阪府東大阪市角田2-4-21 |
恵那工場 |
〒509-7126
岐阜県恵那市武並町新竹折21 |
設立 |
1965年 |
社員数 | 165人 |
資本金 | 2000万円 |
売上高 | 54億円(2023年8月期) |
URL | https://shinko-inc.co.jp/ |
▲本社工場全景
株式会社システムユニ
生産管理システムを日々の生産活動と完全に連動させ、根気よく運用を続け、カイゼン・改革を推進する人材を会社の中に作ります
〒540-0038 大阪市中央区内淡路町2-4-2 ノアーズアーク天満203
TEL:06-6946-7001
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運用ソフト開発担当:周防義弘
担当営業:久岡美弘