▲社員の皆さん

株式会社 精和工業所

TPiCSを社内共通言語に

ムダ取りや工期短縮などで成果

TPiCSを“共通言語”として社内各部門の連携を深める―。精和工業所の生産管理の取り組みが一段とパワーアップしている。TPiCS3.1から4.0へとバージョンアップしたのを機に業務を見直し、発注と製造のリードタイム擦り合わせにより工期を大幅短縮。画面からいつでも確認できる作業マニュアルや充実した生産指示書も現場で好評だ。今後は、工場内のペーパレス化や生産設備からの情報の自動吸い上げ、TPiCS情報の経営戦略的活用なども視野に入れている。



高付加価値のステンレス加工

 ㈱精和工業所はステンレス薄板の溶接をコア技術として、板金・溶接・組立によって電気温水器などの住宅設備機器、恒温槽などの環境試験装置、リチウムイオン電池用ケース、燃料電池用構造体などを製造する。創業は1962年で、一般ステンレス加工による業務用厨房機器の製作からスタート。数年後、ステンレス製の電気温水器などが登場したのを見て省エネ時代の到来を予感。ステンレス製の小型電気温水器や各種ステンレス缶体の製造に事業の舵を切った。

 当初はオーステナイト系ステンレス材料を使った各種ステンレス缶体の製造をしていたが、温水環境における応力腐食割れの問題を防ぐことが難しい。そこで、この問題を解決するため高純度フェライト系ステンレス材料を用いたステンレス缶体の製造を開始した。同材料は、オーステナイト系ステンレス材料に比べ、プレス加工などの絞り加工性に難が

あり、溶接時に溶接割れを起こすなどの難しさがあるが、加工条件の検討や溶接治具などに工夫を凝らし、信頼性の高い独自の溶接工法を確立した。同社の付加価値の高い溶接や板金・組立技術は外部からの評価も高く、2018年に経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定されている。

 ▲ 製造部風景


業務の流れにシステムが対応できず

 ▲ 原克彦社長

 ▲ 中本次朗氏

 同社が生産管理に関するシステム(以下、旧システム)を導入したのは1990年代後半のことである。「生産管理システムというよりも、発注在庫管理システムという感じのものでしたが、ある時期までは重宝していました」と原克彦社長は話す。同社の業務は、かつては貯湯タンクの繰り返し生産が中心で、マスター件数もそれほど多くはなかった。ところが2000年代に入ると環境試験装置をはじめとする多品種少量生産の引き合いが増加し、マスター件数が増えて旧システムのMRPの能力では対応しきれなくなってしまった。

 システムだけでなく、職務体制にも課題はあった。同社では当時、本社伊丹工場、奈良工場での製造を行っており、部門単位、製品単位毎に生産管理の担当者がいた。しかも、その担当者は生産管理以外にも発注、出荷、在庫管理まで行っていた。つまり、調達のためにMRPを実行する人が10人ほどいたわけである。それぞれの担当者がMRPを実行するので、同じ部品が重複して発注されることがある。その結果、仕入れ先から「何とかしてほしい」と言われたため、それらをまとめる後処理が必要になり、それに膨大な時間がかかったという。「とくに一品物の生産管理担当者は大変な仕事量になってしまい、忙しいときには深夜近くまで発注処理に追われていました。私も当時は生産管理担当者の一人であり『こんなことは、長くは続けられない』と思ったものです」(原社長)。

 また、「それぞれの担当者が自分の仕事の負荷を減らすため、外付けのプログラムをいろいろ作っていました。すると、業務の属人化が進み、同じ製造部内でも仕事を手伝えなくなっていました」(第一製造部係長の中本次朗氏)。こうした状況を打開し、適切な生産管理を行うために2008年、旧システムに替えてTPiCS3.1を導入した。


軽さと柔軟性を実感

 TPiCSを選んだ理由は、一言でいえば「軽さと柔軟性」であった。同社では新システムの導入を機に組織改革を行い、調達部門である資材部を新設し、MRPの実行を含めてそれまで各担当者に任せていた発注業務を一元化した。マスター件数が増える中で、一括でMRPを回すには軽々と回るシステムでなければならない。それにフィットしたのがTPiCSであったわけである。また、同社の業務は繰り返し生産をはじめ、多品種少量、短納期、一品物など、さまざまな生産形態が存在するが、TPiCS3.1はこれらのいずれにも対応できる柔軟性(汎用性)がある。

「他社のシステムでわれわれが目指す生産・発注・在庫管理を実現しようとすると、かなりの外付けというかソフトウェア開発が必要になったと思います」(技術部主任の鳥山泰三氏)。

 ▲ 鳥山泰三氏


TPiCSを打ち合わせの共通言語に

 ▲車川正人氏

 それでも、立ち上げ当初は苦労した。「資材部に発注を集中させれば製造部の担当者の負荷が減り、製品構成がしっかりつくれるはずでしたが、担当者がそういうやり方に慣れていなかったのです。生産指示に対しても、現場から『どこまで、どうつくってよいかわからない』とか、『部材の入庫が早すぎるのでは』といった問い合わせが頻繁に上がってきました」(中本氏)。

 そこで、現社長の原氏を中心に資材部や製造各部の代表が集まり、何回も打ち合わせを重ねた。そこから見えてきたのが「TPiCS用語を共通言語として使う」ことだった。言葉による表現は個人ごとに異なるため行き違いが起こりがちだが、「いつ入ってくるのですか」「いつから使うのですか」といったひとつひとつの言葉を含め、TPiCS用語をコミュニケーションの媒介手段として使うことにした。

 「幸いなことに、TPiCSは機能がシンプルで柔軟性があるので、打ち合わせ結果をシステムに反映させることが容易です。実際に、問題が発生するたびに『コンピュータのここを調整しよう』と皆で決め、スムーズにコンピュータに反映できました」と資材部係長の車川正人氏は話す。

 当初、大きな問題となったのは、各現場が工程に余裕を持ちたがったことである。その結果、工期が長くなりがちだった。しかし、それについても、現場の人と膝を交えて議論した結果、工程はみるみるうちに縮まっていったという。「とくに工程短縮の活動が、ムダ取りにつながったのが大きかったです」(中本氏)


工期を2~3割短縮

 こうしてTPiCS3.1は職場に根づき、業務改善に大きな役割を果たした。しかし、その間にも業務量は増大し、マスター件数は増加の一途を辿った。やがてVer3.1の限界を感じるようになり2017年、Ver4. 0にシステム更新した。直接のきっかけは、「MRPの実行に失敗するケースが何度か出始めたことですが、もう一度業務を見直し、『これまでやり切れてなかったことをやっていこう』という思いのほうが強かったです」(鳥山氏)。

 さすがにTPiCSの使い方には慣れていたが、それでも当初は多少、手間取った。過去10年間で外付けのプログラムを何本かつくってきたが、バージョンアップ時にすんなり移行できないプログラムがあったこと。また、各端末へのインストール型からサーバ集中型に変わったため、一時、レスポンスが遅くなるなどの問題もあったが、設定を最適化するなどして、1つひとつ乗り越えた。

 バージョンアップの威力は大きかった。端的な例はMRPの実行時間が半減したことだ。同社の昼休みは45分間で、前半組と後半組で時間差を設けている。MRPは

その昼休みに実行するが、Ver3.1(アイテム約7万件)だと約40分かかったため、後半組の業務時間に食い込んでしまった。しかしVer4.0なら20分以内で終わるので、業務に支障を来すことがなくなった。業務改善の取り組みでは、各部門の代表者8人からなる委員会活動が大きく物を言った。同社の製造には、板金・溶接・組立などの工程があるが、工期のさらなる短縮を目指して、他部門の協力を得ながら製造各部署で擦り合わせを行ったところ、「ものにもよりますが、Ver3.1時代と比べても各工程で約1日、全体として2~3割の短縮ができました」(中本氏)。こう

した一方、生産指示書を両面印刷にして裏面に加工情報を記載したり、TPiCS画面からワンタッチで呼び出せる操作マニュアルを製作するなど、現場作業の効率化を図るさまざまな仕組みを構築した。

 ▲資材部のTPiCS画面


ペーパレス化やIoTとの連携も視野に

 TPiCS4.0は今ではすっかり社内に定着。生産効率は大きく向上した。しかし、課題もある。たとえば、業務量の増大などにより現場に紙が増えており、「ペーパレス化に挑戦したい」という声が全社的に上がってきている。また、工程ごとの負荷状況を把握できる「部門別ガントチャートオプション」や、一品物の生産に向く「製番管理機能」などVer4.0の持つ機能でも、現状では使っていないものがあり、「条件が整えば使ってみたいという気持ちもあります」と車川氏は言う。

 これまではどちらかというとオペレーションの改善が中心だったが、「AIやIoT、ロボット生産などの流れの中で、生産現場の情報をリアルタイムにTPiCS生産管理に反映できるような仕組みも考えていきたい」と原社長は話す。このほか、TPiCSに入力したデータを直接、経営情報として落とし込める、情報の戦略利用なども視野に入れている。

 ▲TIG溶接

 ▲ブレーキプレス加工機の操作


会社概要

株式会社精和工業所

▲社屋の外観

代表者 原 克彦
本社 〒664-0836 兵庫県伊丹市北本町3-105
TEL.072-782-0281 FAX.072-770-2455
創業 1962年4月
設立

1965年12月

社員数 245人
資本金 2400万円
売上高 41億円(2018年9月期)
URL https://www.seiwa-ic.co.jp

主な製品例

▲ステンレス貯湯タンク


導入システムインテグレータ

株式会社 システムユニ

生産管理システムを日々の生産活動と完全に連動させ、根気よく運用を続け、カイゼン・改革を推進する人材を会社の中に作ります


〒540-0038 大阪府大阪市中央区内淡路町2-4-2 ノアーズアーク天満203

TEL:06-6946-7001
MAIL:hisaoka@systemuni.com

担当営業:久岡美弘

支援担当:下津智弘藤井昌弘

運用ソフト開発担当:周防義弘

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