▲生産管理関係の皆さん

松栄電工 株式会社

売上は伸びても、在庫は適正を維持

指示型生産管理で在庫の見える化を実現

つくりすぎも欠品も許されない自動車業界の中にあって、松栄電工の生産管理の精度が着実に向上している。TPiCSの導入から8年。指示型の生産管理、短納期対応、在庫適正化などの初期課題はほぼクリア。より効率的な運用を目指して、近年はIoTによる作業の進捗状況の可視化管理にも取り組んでいる。新規顧客への拡販も順調に進んでいることが何よりもその効果を物語っている。将来はTPiCSのデータを活用して作業の負荷分散を自動的に行う予定である。



技術力に優れるも、生産管理には手を焼く

 松栄電工㈱はワイヤーハーネスとスイッチの2つの製造部門を持つ自動車部品メーカーである。本年3月で設立50周年を迎える。ワイヤーハーネス部門は、材料の調達からワイヤーの切断・圧着、防水加工、ハーネス組付けまで社内で一貫生産し、大手自動車部品メーカーのデンソーグループなどに納品する。スイッチ部門は、プッシュスイッチの組付けや樹脂部品の成形などを行い、グループ会社の㈱松田電機工業所(愛知県小牧市)を通じて同じく大手自動車部品メーカーの㈱東海理化に全量を納品する。高品質、短納期生産を強みとし、ワイヤーハーネスに使われる防水加工やスイッチ表面に施す樹脂の2色成形など技術力には定評がある。

 半面、生産管理には長年、手を焼いてきた。管理用コンピュータとしてオフコンが使われ、外部に製作委託した独自のシステムが動いていたが、システムは硬直化し、使いやすいものではなかった。プログラムは特殊言語で書かれ、社内で修正やメンテナンスが行えるのは一人だけで、その人がいないと何もできない状態だった。しかも、実在庫とコン

ピュータ上の在庫が合わず、在庫の適正化が図れないという大きな問題を抱えていた。

「欠品の発見が遅れ、部品メーカーへ在庫を確認し急いで取りに行くことも多々あった。営業の仕事は部品の緊急手配が主な仕事となっていました」と経営企画室主幹の松下哲夫氏は話す。当時、同社では営業・購買部門が生産管理の一部も担当しており、松下氏はその責任者だった。 

 ▲ 自動機の多いハーネス切圧の製造現場


参考になった導入ユーザーへの見学

     ▲ 経営企画室主幹の松下哲夫氏

 転機が訪れたのは2011年。バグが多く、ランニングコストの高いオフコンから、使いやすく安価で安心して使い続けられるパッケージシステムへの転換を模索しているころだった。「当初はオフコンのバージョンアップも考えていましたが、以前から信頼しているコンサルタントの先生から、『将来を見据えて、汎用性のあるTPiCSを導入すべ

きだ』とアドバイスをいただいたのです」と松下氏。それまでTPiCSの名前すら知らなかったが、その年の12月に導入ユーザーを見学して、「これなら上手くいくだろう」と直感したという。TPiCSに初めて触れ、「それまでのオフコンではページがスクロールせず、いちいちめくらないといけなかったが、実にスムーズに動くし、総じてパソコンライクで使いやすい」と感じた。だが、松下氏が一番参考になったのは見学先の導入プロセスだった。

 その会社は一度、生産管理の立上げで挫折を味わっている。課題認識が明確でなく、製造現場の意見を聞かずに生産管理システムの担当者のみで導入を図った結果、現場では使えなかった。再立ち上げでは、その反省に立ち、工場全体の取り組みとし長期スパンでシステムを軌道に乗せたのだ。松下氏は見学先に倣い、工場全体の取り組みにするとともに、現場任せの生産から、安定した生産に向け「指示型の生産管理」「短納期対応」「在庫適正化」を全員の課題認識とした。TPiCSを入れるのはいいが、現場の情報をしっかり吸い上げないと在庫の適正化はできない。それには現場の効率化が必要だが、現場に負担をかけず、納得してもらうことを前提とした。また、自動車業界ではかんばん方式によってモノづくりを行うのが通例だったが、システムを円滑に運用するには「指示型」がベストであると判断した。こうしてユーザー見学から2ヶ月後の2012年1月、TPiCS3.2の導入が決まった。


導入時にBOMをチェック

 しかし、システムの移行には苦労した。何しろ何十年も前からオフコンを使い続けてきたため、TPiCSにギャップを感じ、一時は社内が混乱した。とくにオフコンのBOMをTPiCS用のBOMに変換登録する作業に手間取った。そもそもオフコン上でも構成の間違いがあり、各

種リードタイムの見直しも必要とした。そこで、TPiCSシステムインテグレータのトーテックアメニティ㈱のSEがまとめ役となり、3人のプロジェクトメンバーと各製造業務のリーダー職を集めてTPiCSに登録済みのBOMを印刷し、1つひとつ登録内容の間違いをチェックしていった。このチェックと修正は稼働開始の直前まで続き、ある程度の精度のBOMが用意されたところで、2012年11月の本番稼働を迎えた。

 しかし、BOMの間違いに加え、いままでにない発想の基準在庫を直前になって設定したこともあり、稼働当初は多くの不要な発注計画が作成されてしまった。部品アイテムが3万点近くあり、短期間で万全なものに仕上げることはできなかったが、その都度、マスタの確認を行った結果、徐々に精度の良い発注と在庫の適正化が図れるようになった。

改善活動の効果が現れる

 導入から半年後の2013年年初には、生産管理に精通する現生産管理G課長の石川晴義氏が着任した。「まだ、もたついているところはありましたが、生産管理システムの形にはなっていました」と石川氏は当時を振り返る。ただし、在庫管理の精度はまだ十分ではなかった。

 現場の負担を減らすため、導入当初から入力業務にはハンディ端末を用いた。例えば資材・生産管理部門では、購入部品かんばんの「外れかんばん」を読み込み、TPiCSの発注情報を作成し、「One-Wayかんばん」を発行する。受入倉庫では注文書と一緒に発注先へ渡している納品書のQRコードを読み込み、TPiCSの検収実績を登録する。また製造現場では作業指示書のQRコードを読み込み、TPiCSの生産実績を登録する、などだ。だが、石川氏が問題視したのは、現場で運用されているのは、初工程の実績と製品の完成実績だけで、中間工程がファジィ(管理されていない状態)になっていたことだ。同社が生産するハーネスは防水性能が高いのが特徴で、電線の切断先端の圧着加工から始まり、コネクタやハウジング配線組立、回路の防水加工が行われる。在庫を正確に把握するには、中間工程のタイミングで実績登録することで使用される部品の管理がされなければいけない。こうした改善を率先して行うことを生産管理部門の役割とし、運用ルールを再設定した。

 問題点はほかにもあった。スイッチ部門は受注すると仕掛かりがなく一気に完成品まで作業を行うため、部品の引き落としは生産実績で都度計画外の実績としていたが、ハーネス部門の場合は、部品のリードタイムが長く、納期に生産が間に合わないことが起こった。スイッチと同じ方式だと、共通する在庫部品がないぶん、部品の納期遅れが発生すると、現場がつくりたいときに材料の欠品となることがあった。こういう問題を1つひとつ洗い出し、その都度、TPiCSのマスタを変えていったのである。これらの改善活動が奏功し、「2015年6月の棚卸しあたりから、在庫管理の精度が大きく向上しました」と石川氏。

     ▲ 生産管理G課長の石川晴義氏

 ▲ 生産管理課のTPiCS端末


さらなる効率アップへ

 ▲進捗状況を可視化する見える化ボード

 ▲現場に設置されたタブレット端末

     ▲生産管理G主任の岡田和樹氏

 同社ではTPiCSのデータをより自社の現場に合わせた視点で見ることのできるトーテックアメニティの「PI-navi」を導入・活用してきた。そしてIoT(モノのインターネット)が注目され始めたのを機に、このソフトウェアを使って、生産進捗を誰もが見られるようにするため、タブレット端

末と見える化ボード(現場に設置した大画面)を導入、2018年に運用を開始した。

「効率化がやや停滞気味になったときのことで、タイミングとしてはとても良かった」と同社。TPiCSの指示を直接、製造ラインごとに設置したタブレット端末につなぎ、実績を入力してボートで見る。タブレット端末はボードへの展開と実績収集、部品のピッキングにも使っている。

 2019年8月には、TPiCSによる生産管理をさらにパワーアップするため、4.1へのバージョンアップを行った。これにより所要量計算が従来の20分から10分に半減したのをはじめ、履歴検索などがよりスムーズになった。TPiCSを初めて導入してから8年。今では社内にすっかり定着した。「TPi CSの良いところは、何と言っても操作が簡単なこと。このシステムなしでは当社の生産管理は考えられません」と、日々、マスタ管理を行う生産管理G主任の岡田和樹氏は話す。

 導入前と比較すると新規顧客への拡販により売上が増加しても適正在庫を継続していることが何よりもTPiCSの効果を物語っている。

 しかし、まだやり残していることはある。現状は売上の6割を占めるワイヤーハーネス部門が先行する形でシステム化されているが、スイッチ部門も同じレベルで管理できるようにすること。また、「将来的にはTPiCSデータを活用して、現場作業の負荷分散が行えるようにしたい」と石川氏は言う。今後も改善の手を緩めず、一歩一歩前進していく考えだ。


会社概要

松栄電工株式会社

▲工場の外観

代表者 松田 佳久
本社 〒441-1634 愛知県新城市長篠字広面11-5
 TEL.0536-32-0561 FAX.0536-32-1880
設立

1970年3月

社員数 220人
資本金 7462万円
売上高 46億円(2019年6月期)
URL http://shoeidenko.co.jp/

 ▲ワイヤーハーネスの組み付け

      ▲ワイヤーハーネスの完成品


導入システムインテグレータ

トーテックアメニティ株式会社

TPiCS-Xを導入した豊富なスキル・ノウハウと豊富な

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