個別生産編

 一口に「個別生産」といっても、それこそいろいろある訳で、個別生産を分類、整理するところから始めましょう。
まず“個別の度合い”という観点で考えてみます。
・顧客から注文を受ける度に全て図面を引いて、繰返し利用できるものがほとんど無い、よって社内に在庫はほとんど無い、このようなバリバリの個別生産の場合があります。
・あるいは、完成品としてはその都度異なるものだが、使用している部品や材料は同じようなものが多い。そこで、部品や材料はある程度在庫を持って生産するという場合もあります。
・ユニット化が進み、ユニットの組み合わせで対応するケースもあります。
・製品の殆どの部分は同じなのだが、銘版や付属部品、リード線などの一部が変わるだけの場合、
・さらには、作っている製品は量産品だが、社内の管理方法として個別管理(製番管理)をしている、といったケースまであります。
また一つの工場の中でも、製品によって個別の度合いが強いものと、弱いものが混在することも稀ではありません。

もう一つの分類方法として、部品集約度を考えてみます。
・沢山の部品を集めて製品を作る場合と、
・一つ(少し)の材料を加工して製品を作る場合、
即ち使用する材料や部品が多いか少ないかも生産管理の問題を考える上で大事なポイントです。
更に、一つの材料を加工する方法でも分類することが出来ます。
・その都度全く異なる形状、異なる加工方法の場合
・ある程度パターン化ができる場合
それぞれ管理の方法が違い、TPiCSの使い方も変わります。

 

この小冊子の中で全てのケースを網羅して説明することは出来ないので、繰り返し性はあまり無いが、部品や材料は複数(多数)使うケースを中心に説明致します。
 なお、個別生産の機能を使用する場合は、「f-MRP製番システム」 又は 「製番管理システム」が必須です。全く繰り返し性が無く所要量計算が不要な場合は、「製番管理システム」を中心に構築することもできます。

(1)TPiCS-Xで、短納期生産、変化に対応できる生産を実現する

(5)TPiCS-Xで、新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する
 少数の生産を前提に説明するので「(5)新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する」は、「短納期生産=全体工期短縮」という観点で、この(1)項で一緒に説明いたします

■では先ず、受注から出荷までの仕事を整理しましょう。
①設計業務→出図
②生産計画作成、手配業務、起票→発注
③サプライヤーさんからの納品
④外注作業、社内作業、組み立て完成
⑤検査
などが挙げられます。
そこで、全体工期を短くするためには、
(A)それぞれの仕事を速く(短く)する
(B)工程間の停滞をなくす
がセオリーです。

■業務面の改善
●セオリー通り、先ず(A)仕事を速くする を考えます。
狭い意味で直接生産管理が影響するのは、②生産計画作成、手配業務、起票だけです。
 繰り返し性が有る場合は、システムにマスター登録をしておいて、それを利用しながら部品展開や工程展開が出来ますが、繰り返し性が無い場合は「始めにマスターを登録して・・・」では、却って手間が増えてしまいます。せめてグループ化が出来れば、それをパターン化してマスターの様に登録し、そのデータを利用して手配データを作る方法もあります。グループ化すら出来ない場合は、ワープロのようにキーボードから直接入力することになります。その場合は操作性が命です。発注先の情報など、既に登録されているものは発注先コードを入力するだけでデータを引っ張ってこられるとか、それもリストから選択してドラッグ&ドロップできるなどがあれば日々の仕事はそれだけでも大分楽になるでしょう。しかし、これだけ発達したIT環境の中で、この機能だけでは不満が残ります。
 そこで当社が開発したのが、構成情報変換オプション(CAD)と、一品生産オプションです。
 CSVファイルに書き出された設計用の製品構成情報をTPiCSで読み込みます。読み込んだデータからマスター登録等の操作無しに手配の元データを作成し、発注先や単価あるいは納期などを書込んで、ダイレクトに注文書発行データを作ることが出来ます。
 CSVファイルは、CADの製品構成情報をCSVファイルに書き出せればTPiCSで読み込むことができます。またExcelで部品表を管理していれば、Excelから書き出すこともできます。
 この構成情報のデータは階層化されているので、新しい製品が既存のユニットを使う場合、そのユニットの図番を指定するだけでよく、その孫部品などのデータは不要になります。このようにして、CADの製品構成情報、或いはExcelの部品表のデータがあれば、手配業務は大幅に改善されスピードアップが図れます。
●過去の類似データを利用する方法
 過去に似た製品を生産したことがあり、その時のデータを利用できれば仕事は速くなります。過去のデータを利用する場合でも、今回はお客様の要求仕様が少し変わっていたり、古い部品は生産中止になっていて代替品を使わざるを得ない等、多少の修正があるものです。一品生産オプションでは過去のデータをコピーしてから、今回の仕様に変更し、指示書データを作ります。
●次は、(B)仕事を並行しながら進める を考えます。
 これを考えると、設計と手配の関係が一番のポイントになるかと思います。
 設計が全て完了していなくても、設計途中の段階で出来るところから手配を始めていく。
 しかし、これらのことは既に多くの工場で、実践なさっていると思います。
ところが、これをなさる場合に一番ネックになる、或いは足を引っ張るのが設計変更ではないでしょうか。
 生産管理の仕事は、一つ一つのことはそれ程難しいことではありませんが、沢山の要素(部品)があって、それがバラバラに動き、そして常に変化するため難しくなります。
 このとき、先程の構成情報変換オプションと一品生産オプションを使うと次の様な処理が出来ます。
設計変更のデータを受け取ると、
・上記手配用元データに、設計変更になり不要になった部品がマーキングされ、[不要]ボタンを押すと、不要になったデータだけが表示されます。
・ 新しく必要になった部品は、新しい手配用のデータが生成されます。
・不要になったデータを表示し、サプライヤーさんと対応策を相談し、その結果をそれぞれのデータに入力します。
・キャンセル出来ないものの中で、他に転用出来るものは製番の引き当てを解除し、転用出来ないものは廃棄処分にします。
・キャンセル出来るものはキャンセル伝票を発行します。
大量の手配データの中で、頻繁に発生する設計変更を、このように簡単に処理することが出来ます。
 設計を急がせ、取り敢えず手配のための製品構成情報(E/BOM)を使って手配を行うと、設計変更のリスクは高まります。
 その変更情報を、正確に、かつ速やかにサプライヤーさんへ伝えるのはとても大変で、結果的には誤手配や欠品の原因になり、却って生産の足を引っ張ることになりかねません。
 しかし、TPiCSではここまで設計変更をシステム処理できるので、この問題も解決できるようになりました。

■実生産面の改善
●先行手配製番
TPiCSの製番管理システムの中には、「先行手配製番(仕込み製番)」の機能があります。
 コンポーネントやコンポーネントや機能部品など、ある程度繰り返し性があるが調達や生産に時間が掛かるようなものは「先行手配製番」で手配しておくことが出来ます。
 先行手配製番で事前に手配しておき、後から受注が入り本製番を展開すると、自動的にその先行製番を引当てることが出来ます。
●個別生産で短納期生産を考える場合、最も重要なことの一つが、部品や材料が計画通りに納品されるか否か、です。
 言うまでもなく、部品が一つでも不足していれば出荷出来ません。
 よって納期を短くするためには、部品が計画通りに納品されることが必要で、その為には、的確なフォローをすることが必要です。
 そこで、次にフォローについて簡単に説明します。
納入遅れを防ぐためのフォローですから、遅れてから騒いでいたのでは仕事になっていません。TPiCSには「予定・遅れリスト」があり、例えば、以前発注していたものの納期が近くなり、予定納期が来週(設定による)になった注残をリストアウトし、印刷は勿論ですが、それをサプライヤーさんにメールで送ることが出来ます。サプライヤーさんのメールアドレスを登録しておけば、TPiCS-Xの画面からボタン一つで全てのサプライヤーさんへ送信することが出来ます。その中には、納入遅れ分も含まれるので、確実なフォローが出来ます。


 あるいは、SCMオプションをお使い頂くと、サプライヤーさんに注文及び「納期回答依頼」をメールで送信することが出来ます。
 サプライヤーさんはSCMオプションのターミナルプログラム(無料)をお使い頂くと、そのメールを自動受信することが出来、納期の変更依頼もそのターミナルプログラムからボタン一つで返信することが出来ます。また返信された納期変更依頼をTPiCSで自動受信でき、更にボタン一つでTPiCSの計画明細データへ反映することが出来ます。
 TPiCSの計画明細データへ反映すると、納期を変更したことにより、もし前後の工程と逆転するような場合は、ガントチャートで赤色表示されるので、日程の再調整が必要なことが直ぐ分かります。日程調整はそのガントチャートのドラッグ&ドロップで行うことが出来ます。

 このような場合の日程調整は、沢山の計画が巻き添えになってしまうものです。調整結果の連絡漏れがまた恐いのですが、SCMオプションの場合は、調整が終了したら、幾つかのボタンをクリックするだけで、影響を受けた全てのサプライヤーさんへ、納期変更のメールを送ることが出来ます。
 このようにして、計画を常にメンテナンスし、確実な、無駄のない計画を作っていくことが出来ます。

(2)TPiCS-Xで、現場の見える化を図る

見える化に関して、繰返し生産も個別生産も本質は同じです。
「見える化」を実現するためには、システムの中の計画データを常に実行計画に合わせる。そして、システムの計画通りに生産することが必要です。


例えば、ガントチャートで計画が見える。ガントチャートでその製番がどこまで進んだか分かる。システムにその機能があっても、データがデタラメでは、表示される内容もデタラメで「見える化」どころではありません。


次に、「見える化」の本質は、見えて何をするか、です。
・TPiCS の製番明細ガントチャートは、製番を元に、製品から構成される各アイテムの着手日、完了予定日の日程が表示され、遅れているアイテムは赤、先行して完成していればグレーになり製番の進捗状況がわかります。

・着手信号機オプションを追加すると、ガントチャート上に○×△が表示され、今何が着手可能か分かり、次の行動に結び付けることが出来ます。

・また、部門別ガントチャートを見ると、生産場所ごとの作業量、仕事の負荷状況が分かるので、生産遅れになる前にスケジュールを調整することが出来ます。

・或いはサプライヤーさんからの延伸願い(遅れ情報)をTPiCSの計画データに反映すれば、後工程に対し部品納期が間に合わないものが赤色表示されるので、問題箇所が直ぐ分かり、調整することが出来ます。
・これらのスケジュール調整をガントチャートのドラッグ&ドロップで行えます。調整した結果は自動的に納期変更指示書を発行したり、SCMオプションを使えば納期変更データをサプライヤーに直接送信することが出来、恐い連絡漏れを防ぐことが出来ます。


システムの計画データを常にメンテナンスすることは、マスターを常に正しくメンテナンスするのと同じように大事なことです。
 システムのデータを常に正しく保ち、システムに魂を入れ、そのデータを本当に活用するのは、大変ですがとても大事なことです。(詳しくは、繰返し生産編の「見える化」もご覧下さい)

(3)TPiCS-Xで、遅れの問題を解決する

 遅れの問題に関しても、繰返し生産と考え方は同じです。
 起きてはならないことを起こさないようにするためには、工場の安全管理の「ヒヤリ・ハット」と同じように、「遅延の予兆を見つけ、事前に問題を潰す」しかありません。(詳しくは、繰返し生産編の「遅れの問題を解決する」もご覧下さい)
個別生産の生産計画調整は、ガントチャート上で、前後の工程との日程計画の関連性や、作業量を考慮しながらマウス等で直接計画を修正します。

(4)TPiCS-Xで、在庫縮小と短納期生産を両立させる

個別生産でも、在庫の発生原因別に在庫縮小を考えます。
①見込み違いや手配ミス、あるいは設計変更なアウトどによる「不良在庫」
②日々の生産活動の中で自然発生する「運用在庫」
に分けます。

■「不良在庫」を減らす
●必要な時に指示書を発行する
 「当社は製番管理をしていて、手配は必要な分しか行わず、在庫は持たない方針です」という会社は良くあります。しかし期末に棚卸しをして在庫が全く無いという会社は、滅多にありません。
 お客様からのキャンセルが無ければ、或いは設計変更が無ければ、また誤手配が無ければ、、さらに必要な数だけ発注することが出来れば、不要な在庫は生まれないはずです。しかし“あって欲しくないこと”が無くならないなら、それを最小限にとどめるようにするのも重要な答えです。それこそが生産管理の真価が問われるところです。
 製番管理の場合も、図面が出たら製番単位に全て発注してしまうのではなく、必要な時期が来るまでは発注しないことにより死蔵在庫のリスクは減らせます。
 TPiCSは製番管理で手配する場合も「伝票発行期間」の設定が働き、製番展開した後、各部品の納期から伝票発行予定日を逆算し、まだ注文書を発行するタイミングでないものは、注文書を発行しません。そのかわり毎日「注文書発行」の操作をしていると、注文書を発行しなければならない時期が来たものは、自動的に注文データが作られ注文書が印刷されます。
 手作業の場合「後で注文書を発行する」方法は、発行漏れの原因になるので、どうしても一度に発行してしまいがちです。また手作業をベースに開発したシステムだと、製番展開したものは全て一度に発行する様に出来ているかも知れません。
 もっとも、個別生産の場合は、後から注文書を発行するとサプライヤーさんからの納入遅れのリスクが高くなってしまう面もあるので、そのバランスを考えなくてはなりません。

●システムの在庫引き当て機能
 計画的な在庫か、意に反した在庫かはともかくとして、手配処理をする時、在庫があればそれを引当てれば有効利用(在庫を少なく)出来、在庫は少なくなります。
 手作業で手配業務を行うと「ついうっかり」忘れてしまうことが少なくありません。システムで処理をしていても一般的な製番管理システムの場合、在庫を引当てる機能が無いものも沢山あります。TPiCSは製番に引当てられていない在庫を、次の製番を展開する時に、引当てることが出来ます。引き当ては在庫になったものだけでなく、計画段階(未完)のデータにも引き当てることが出来るので、大きく在庫を減らすことが出来ます。


●手配業務のミスを減らす
 在庫を減らすためには、誤手配を減らすのも大事なことです。「短納期生産」の項では「処理が簡単になり、速くなる」ことを中心に説明しましたが、TPiCSの構成情報変換オプションと一品生産オプションの連係は「手配ミスを減らす」というもう一つの重要な効果があります。
言うまでもなく、誤手配が無くなればそれに起因する在庫もなくなります。

■「運用在庫」を減らす
 運用在庫は、「工場に入ってから出るまでの必然的に生じる在庫」と「急な注文に備えるための在庫」に分けて考えられますが、個別生産の場合の「必然的に生じる在庫を減らす」と「生産遅れ、出荷遅れを減らす」は殆ど同意義なので、「在庫」という観点で触れる必要は無いと思います。
●「急な注文に備える在庫」を減らす為には、当然の話ですが「必要性を吟味する」、あるいは「購入ロットを小さくする」ことが必要です。また、「使用する部品の標準化」も効果があります。


 在庫部品の種類や、量が多くなった場合は、部品や材料だけをf-MRPで管理することも出来ます。TPiCSは、アイテムにより製番で管理をしたり、f-MRP処理をしたり、その部品やユニットの性質により、組み合わせて(混合して)設定することが出来ます。また事前にf-MRPで手配した物を製番に引当てることも、製番で展開した結果、不足分があれば、f-MRPで手配することも可能です。これは種類や量が多くなった時は有効な機能です。